なぜネクラ産業の保険会社が「人生は夢だらけ」を謳うのか
とと姉ちゃんが歌って踊って、なにやら豪勢で忙しいCMが気になっている。
といっても割と前のCMだが。
「人生は、夢だらけ」
なにかの娯楽産業の広告かと思えば、なんとネクラ産業の生命保険のCMだった。
高畑充希のCM動画 かんぽ生命『それは人生、わたしの人生篇』90秒Ver.
高畑充希【かんぽ生命 CM】人生は、夢だらけ。「つぎは、何くる?」篇
ネクラ産業ってナニって話だが、これは慶応大学名誉教授の井原哲夫さんの著書「人の心を見抜いて成功する方法」からの言葉である。
ネクラ産業は、将来の心配を解消して、今の安心を手に入れるためにお金を使おう、と促す産業。
つまり、保険業、教育産業、健康産業である。
それに対して、ネアカ産業というのもある。それは、将来なんてわからないんだから、今を楽しむことにお金を使おう、と促す産業である。
観光業や飲食産業などがあげられる。
で、ご想像通り、日本人はそのネクラ気質が強いために、時代が変わってもネクラ産業が根強いというワケである。
しかし、社会がどんよりした今の時代、そんな脅迫概念みたいなネクラ広告を打ち出したら、たちまち視聴者にチャンネルを変えられてしまう。
そこで深刻になりすぎない、ネクラ広告が生まれた。
「人生は、夢だらけ」。
人生には、お金では買えない”抽象的な”幸せがたくさんある、でも、その幸せをかみ締めるには、やっぱり将来に対しての”具体的な”安心感が必要だよねってことだろう。
もしかすると、社会が不穏になればなるほど、こう言ったネクラ産業のCMが明るくなるかもしれない。
このかんぽ生命のCMも、前回の能年玲奈バージョンからいささかパワーアップしているが、それは深読みしすぎだろうか。
とにかくこの高畑充希バーションのいいところは、椎名林檎の歌詞である。
♪近寄ればかなしく 離れればたのしくみえてくるのよ
♪あとで振り返れば 酸いも甘いもどっちも愛しいよ
こんな偉人が人生を達観したようなセリフを吐かれたら、そこらの保険営業マンの脅し文句よりも、つい信頼してしまう。